【こころの健康講座〜自分の機嫌を直すヒント〜③】

日々の生活の中でしんどさを軽減する為のちょっとした考え方のポイントを不定期でご紹介します。イライラ解消などにご参考になれば幸いです。
「忘却とは忘れ去ることなり」という言葉がありますが、「忘却」は人間の人生においてとても大切なスキルでもあります。忘れるべく努力して忘れる…というより、人生の中で自然に忘れてしまっていることで前を向けているということも案外あります(これは、時間があなたの味方になってくれているということでもありますかね)。また、記憶の中で自分はこうだったと思っていても、実際は違っていたとか周りの人はそう思っていなかったとか、なんとなく齟齬が生じていてイライラしたり悲しかったり悔しかったり…といった体験もあるかもしれませんね。
例えば、何年も前に知人と話していたとき、「〇〇ということをあなたから聞いたよね?××さんのエピソードとして…」と言われ、大変ショックを受けたことがあります。確かにその知人とずいぶん前にその話はしました。でも私が記憶しているのは、「〇〇ということは目の前の知人から聞いたこと、それは△△さんのエピソードの中で」だったのです。〇〇という内容については2人とも同じ認識でしたが、お互いに相手から聞いたことになっており、その中のエピソードに出てくる人物も全く違った人だったのです。お互い「えっ?!」っていう驚きいっぱいの中で、あーだこーだと話しましたが、お互いの記憶は譲れず相当疲弊したのを覚えています。
こんなふうに、どちらが正しいとか間違っているとかの問題ではなく、全く違うように個々で記憶してしまっている出来事というのは案外たくさん存在しています。もしも一つの出来事を大勢で体験したとしたら、きっとその人数だけの事実(本人にはそう感じられている)があるはずです。また、人は個々の時間の軸の中で記憶を自然に変化させていくことができます。しかも故意にではなく自然に「いい塩梅に」です。例えば、□□さんて、中学のときの友人だったか、高校のときの友人だったかふとわからないとか、絶対忘れないと誓ったこと自体はしっかり覚えているけれど内容があやふやになってしまっているとか、自分にとってとてつもなくすごい美談が記憶の中にあるけれど果たして事実なのか?と不思議に感じている出来事があるとか、あんなに怒りに燃えて許せなかったことも時間を経て当人に会って話したら許している自分が居たとか等々…。もしかしたら身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。
まさに冒頭で話したように、人は、いい塩梅に忘れることで、生きていけるのかもしれません。人生の処世術として「忘却」があるということですね。要は「相手も絶対同じように覚えている、だから~し続けなくては!」とか、「絶対に忘れてはいけないのにどうして忘れてしまったのだろう!自分はよくない人間だ!」とか、「●●さんはどうしてあんな思い違いをしているんだろう!ちょっとイライラする」とか、マイナスの観点からあまり考えないことでしょうか。自分も含め人の記憶なんて、良くも悪くもそれくらいのものだ😀と考えてみましょう。いい塩梅に忘れてたり、いい塩梅に変わっていったり…。忘れて相手を許せるのなら、あなたは成長しているとも言えますよね。「いい塩梅に忘れること」に寛容になる、そうやって人は生きている…ということを頭のどこかに置きつつ、自分も相手も責めることなく毎日を過されてみてはいかがでしょうか。しんどさ軽減策の一つです。
公認心理師・臨床心理士 濵口 美雪
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